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高血圧

病気について

高血圧症とは、安静時の血圧が正常範囲よりも常に高い状態が続く病気です。

日本の基準では、遺伝や生活習慣(塩分の摂りすぎ、肥満、運動不足、ストレス、喫煙など)が原因で起こる「本態性(ほんたいせい)高血圧」が全体の約9割を占めます。残りの約1割は、他の病気や薬の副作用が原因で起こる「二次性高血圧」です。

  • 「サイレントキラー(静かなる殺人者)」
    高血圧の恐ろしいところは、自覚症状がほとんどないことです。気づかないうちに血管に負担をかけ続け、動脈硬化を進行させます。
  • 放置した場合のリスク
    血管が傷つき、詰まったり破れたりしやすくなります。その結果、脳卒中(脳梗塞・脳出血)、心筋梗塞・心不全、慢性腎臓病(CKD)、認知症などの重大な合併症を引き起こすリスクが跳ね上がります。

主な診断方法

血圧は常に変動しているため、1回測定が高かっただけで高血圧症と診断されるわけではありません。通常は、複数回の測定結果に基づいて診断されます。現在、診断において最も重視されているのは「家庭血圧(自宅での測定値)」です。

診断基準値(mmHg)
測定場所 最高血圧(上の血圧) / 最低血圧(下の血圧)
診察室血圧 140 / 90 以上
家庭血圧 135 / 85 以上
  • 診察室血圧と家庭血圧のギャップ
    • 白衣高血圧:病院では緊張して高くなるが、自宅では正常。
    • 仮面高血圧:病院では正常だが、自宅(特に早朝や夜間、職場など)では高い。※こちらの方が合併症のリスクが高く、注意が必要です。
  • その他の検査
    高血圧の原因(他の病気がないか)や、すでに合併症(心臓や腎臓へのダメージ)が起きていないかを調べるため、血液検査、尿検査、心電図検査、胸部X線(レントゲン)検査なども合わせて行われます。

主な治療

高血圧治療の最終的なゴールは、血圧を下げることそのものではなく、「将来の脳卒中や心臓病を防ぎ、健康寿命を延ばすこと」です。治療は大きく分けて2つの柱があります。

1. 生活習慣の修正(食事・運動など)

軽症であれば、まずは生活習慣の見直しから始めます。薬を飲むことになった場合でも、このベースが整っていないと薬の効果が十分に発揮されません。

  • 減塩(最重要):目標は1日6g未満です。
  • 食生活の改善:野菜や果物(カリウム)、青魚(EPA・DHA)を積極的に摂り、コレステロールや飽和脂肪酸を控えます。※腎臓病がある方はカリウム制限が必要な場合があります。
  • 適正体重の維持:BMI 25未満を目指します。
  • 運動:定期的な有酸素運動(ウォーキングなどを毎日30分以上、または週180分以上)が効果的です。
  • 節酒・禁煙:アルコールは適量にとどめ、タバコは完全にやめます。
2. 薬物治療(降圧薬)

生活習慣を改善しても血圧が下がらない場合や、初診時から血圧が著しく高い場合、また糖尿病や腎臓病などの持病がある場合は、最初からお薬(降圧薬)による治療を開始します。患者さんの年齢や持病、体質に合わせて最適なものが選ばれます。

  • カルシウム拮抗薬:血管を拡張させて血圧を下げます。
  • ARB / ACE阻害薬:血管を収縮させる体内物質の働きを抑え、血管を広げるとともに、心臓や腎臓を保護する作用があります。
  • 利尿薬:体内の余分な塩分と水分を尿として排出させ、血液のボリュームを減らして血圧を下げます。
  • β(ベータ)遮断薬:心臓の過剰な働きを抑え、脈拍を落ち着かせて血圧を下げます。

注意点
「症状がないから」「血圧が下がったから」といって、自己判断で薬を減らしたり中止したりするのは非常に危険です。血圧のリバウンドを招き、脳卒中などのリスクが急上昇します。薬の調整は必ず医師の指示に従ってください。

脂質異常症

病気について

脂質異常症とは、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)のバランスが崩れ、基準値から外れてしまっている状態のことです。以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、体に良いとされるHDL(善玉)コレステロールが「低い」場合も問題となるため、現在は「脂質異常症」という名称に変わりました。

原因の多くは、過食、運動不足、肥満、喫煙、アルコールの飲みすぎ、ストレスといった生活習慣の乱れですが、遺伝的な体質(家族性高コレステロール血症など)が原因の場合もあります。

  • 自覚症状がまったくない「静かなる進行」
    血がドロドロになっていても、痛みや苦しみなどの自覚症状は一切ありません。そのため、健康診断で指摘されても放置してしまう方が非常に多いのが現状です。
  • 放置した場合のリスク
    血液中にあふれた余分なコレステロールは、血管の壁にしみ込んで蓄積し、プラーク(コブ)を作ります。これが血管を狭くし、弾力性を失わせる「動脈硬化」の原因になります。放置し続けると、ある日突然プラークが破れて血管を詰まらせ、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる重大な病気を引き起こします。

主な診断方法

脂質異常症は、採血(血液検査)によって診断します。主に以下の4つの数値をチェックします。

脂質異常症の診断基準(空腹時採血)
検査項目 基準値(診断される値) 役割と特徴
LDL コレステロール(悪玉) 140 mg/dL 以上
(120~139 は境界域)
肝臓から全身にコレステロールを運ぶ。多すぎると血管の壁に溜まって動脈硬化をすすめます。
HDL コレステロール(善玉) 40 mg/dL 未満 全身の余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す。少ないと血管が掃除されず、動脈硬化のリスクが高まります。
トリグリセライド(中性脂肪) 150 mg/dL 以上 体のエネルギー源。増えすぎると悪玉を増やし、善玉を減らす原因になります。
Non-HDL コレステロール 170 mg/dL 以上 総コレステロールから善玉を除いたもの。全体の悪影響度を測る指標です。

※食事の影響を受けやすいため、原則として「10〜12時間以上の絶食(空腹時)」で採血を行います。

主な治療

治療の目的は、数値を下げることだけでなく、「将来の心筋梗塞や脳梗塞の発症を予防すること」です。

1. 生活習慣の改善(これが治療の土台です)

脂質異常症の治療は、まず食事や運動の見直しからスタートします。

  • 食事療法(タイプ別に意識します)
    • 悪玉(LDL)が高い方:脂っこいお肉(バラ肉や脂身)、バターやラード、卵の黄身、インスタント食品などを控え、野菜や海藻、大豆製品(納豆や豆腐)、青魚(サバやイワシなど)を積極的に摂りましょう。
    • 中性脂肪(TG)が高い方:食べすぎ(カロリーオーバー)をはじめ、甘いもの(ジュースや菓子類)、炭水化物の摂りすぎ、そして何よりアルコールの飲みすぎを控えることが効果的です。
  • 運動療法
    毎日30分以上(または週に合計180分以上)のウォーキングや水泳などの有酸素運動を行うことで、中性脂肪が減り、善玉(HDL)コレステロールが増えることが分かっています。
  • 禁煙
    タバコは善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールを酸化させて動脈硬化を強力に進めてしまいます。禁煙は必須です。
2. 薬物治療

生活習慣を改善しても数値が目標値に達しない場合や、すでに動脈硬化が進んでいる方、糖尿病や高血圧などの持病がある方は、お薬による治療を行います。

  • スタチン系薬:肝臓でコレステロールが作られるのを抑える、最もよく使われるお薬です(悪玉を強力に下げます)。
  • 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬:食事や胆汁に含まれるコレステロールが小腸から吸収されるのをブロックします。
  • フィブラート系薬 / EPA・DHA製剤:主にお薬で中性脂肪(トリグリセライド)を下げる際に使用されます。

2型糖尿病

病気について

糖尿病とは、血液中の糖分(血糖)を細胞に取り込んでエネルギーに変える「インスリン」というホルモンが十分に働かなくなり、血液中の糖分(血糖値)が異常に高くなってしまう病気です。

糖尿病にはいくつかタイプがありますが、日本の糖尿病患者さんの約95%以上が「2型糖尿病」です。これは、遺伝的な体質に加えて、過食、運動不足、肥満、ストレス、加齢などの生活習慣が重なることで発症します。

  • 初期はほとんど無症状
    「血糖値が高い」だけでは、体に痛みや強い違和感は出ません。かなり血糖値が高くなって初めて、「喉が異常に渇く」「尿の回数や量が増える」「急に体重が減る」「疲れやすい」といった症状が現れます。
  • 放置した場合のリスク(3大合併症と大血管障害)
    高すぎる血糖は、全身の血管をボロボロに傷つけます。特に細い血管がダメージを受けることで、以下の「3大合併症」が起こります。
    1. 網膜症(しめじの「し」):眼底の血管が傷つき、進行すると失明の原因になります。
    2. 腎症(しめじの「め」):腎臓のフィルターが壊れ、最終的には人工透析が必要になります。
    3. 神経障害(しめじの「じ」):足のしびれや痛みの感覚が麻痺し、怪我に気づかず放置することで細胞が壊死(えそ)し、最悪の場合は足を切断することになります。
    さらに、太い血管の動脈硬化も進むため、脳卒中や心筋梗塞のリスクも数倍に跳ね上がります。

主な診断方法

糖尿病の診断では、現在の血糖値だけでなく、過去1〜2ヶ月間の血糖の平均状態を正確に把握することが重要です。そのため、以下の検査を組み合わせて診断します。

診断に使われる主な指標
  • 血糖値(空腹時血糖 / 随時血糖値)
    採血をしたその瞬間における血液中の糖分です。空腹時で 126 mg/dL 以上、または食事の時間に関わらず測定した値が 200 mg/dL 以上の場合、糖尿病型と判定されます。
  • HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)
    赤血球の中のヘモグロビンがどれくらい糖と結びついているかを示す数値です。過去1〜2ヶ月間の「血糖値の平均」を映し出すため、食事の影響を受けない非常に重要な指標です。これが 6.5 % 以上の場合、糖尿病型と判定されます。

これらをもとに、複数回の検査や、過去の健診結果などを総合的に判断して医師が診断します。

主な治療

糖尿病治療のゴールは、血糖値をただ下げることではなく、血糖を適切にコントロールすることで「合併症を防ぎ、病気がない人と変わらない健康で豊かな生活を送ること」です。

1. 食事療法と運動療法(治療の第一歩)

2型糖尿病の治療において、生活習慣の改善は薬以上に重要な意味を持ちます。

  • 食事療法(「食べてはいけないもの」はありません)
    大切なのは、「適正な量を、バランスよく、規則正しく食べる」ことです。
    • 腹八分目を心がけ、ドカ食いやまとめ食いを避ける(1日3回規則正しく)。
    • 野菜、キノコ、海藻類(食物繊維)から先に食べる(ベジタブルファースト)ことで、食後の血糖値の急上昇を抑えられます。
    • 間食(お菓子やジュース)の習慣を見直します。
  • 運動療法
    筋肉を動かすことで、血液中のブドウ糖がエネルギーとして消費され、さらにインスリンの効き目(感受性)が良くなります。ウォーキングなどの有酸素運動を、週に3日以上(できれば毎日)、1回20〜40分程度行うのが効果的です。
2. 薬物治療

食事や運動を数ヶ月続けても目標の血糖値(一般的には HbA1c 7.0%未満)に届かない場合、内服薬や注射による治療を導入します。2型糖尿病のお薬には、患者さんの状態に合わせて多くの選択肢があります。

  • 飲み薬(経口血糖降下薬):インスリンを出しやすくする薬、インスリンの効き目を良くする薬、糖の吸収を遅らせる薬、尿から余分な糖を排出させる薬(SGLT2阻害薬)など、体質や原因に合わせて使い分けます。
  • 注射薬:体内のインスリン分泌を促す「GLP-1受容体作動薬」や、足りなくなったインスリンそのものを補う「インスリン注射」があります。※膵臓が疲弊している場合などはインスリン注射が必要です。

低血糖への注意
お薬の治療が始まると、食事の遅れや激しい運動などが原因で血糖値が下がりすぎる「低血糖(冷や汗、ふるえ、動悸など)」が起こることがあります。治療を始める際は、低血糖が起きたときの対処法(ブドウ糖の携帯など)についても丁寧にご説明しますのでご安心ください。

睡眠時無呼吸症候群 (SAS)

病気について

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、睡眠中に何度も呼吸が止まったり(無呼吸)、浅くなったり(低呼吸)する病気です。

医学的には「10秒以上の気流停止(無呼吸)が、7時間の睡眠中に30回以上、または1時間あたり5回以上起こる状態」と定義されています。原因の多くは、肥満による首周りの脂肪、あごが小さいこと、舌の付け根が落ち込むことなどにより、空気の通り道(気道)が塞がってしまう「閉塞型」です。

  • 本人に自覚がないケースが非常に多い
    寝ている間の出来事であるため、本人は気づかず、家族からの「激しいいびき」や「息が止まっている」という指摘で発覚することがほとんどです。日中の強い眠気や、朝起きたときの頭痛、熟睡感のなさなどもサインとなります。
  • 放置した場合のリスク
    呼吸が止まるたびに、体は酸欠状態になり、脳や心臓に大きなストレス(交感神経の緊張)がかかります。これを毎日繰り返すことで、高血圧、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病などのリスクが数倍に跳ね上がります。また、日中の猛烈な眠気による居眠り運転や労働災害など、社会的なリスクも引き起こします。

主な診断方法

まずは自宅で行える簡易的な検査からスタートし、必要に応じて専門的な精密検査を行います。

  • パルスオキシメトリー・簡易アプニアモニター(自宅検査)
    手の指先や鼻に小さなセンサーをつけ、寝ている間の「酸素の量(動脈血酸素飽和度)」や「呼吸の状態」を測定する簡単な検査です。機器を自宅に持ち帰って普段通りに眠るだけで測定できます。
  • 終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)
    簡易検査でさらに詳しい調査が必要と判断された場合に行う精密検査です。脳波、呼吸、眼球の動き、心電図、寝返りの回数などを総合的に測定し、睡眠の質や無呼吸の正確な回数を調べます。医療機関に1泊入院して行うのが一般的ですが、最近では自宅で行える簡易PSG検査を導入しているクリニックもあります。

主な治療

無呼吸の回数や重症度、原因に合わせて最適な治療法を選択します。

1. CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)

重症の患者さんに対して最も効果的で、世界中で標準的に行われている治療法です。睡眠中に鼻にマスクを着用し、機器から一定の圧力をかけた空気を送り込むことで、気道を強制的に広げて無呼吸を防ぎます。

  • メリット:使ったその日からいびきが止まり、朝の目覚めがスッキリするなどの劇的な効果を実感できます(※健康保険が適用されますが、月1回の定期受診が必要です)。
2. マウスピース(口腔内装置)

軽症〜中等症の患者さんに適しています。専門の歯科医院で作製し、下あごを少し前に出した状態で固定するマウスピースを装着して寝ることで、気道を広げます。

3. 生活習慣の改善

治療の基礎であり、軽症であればこれだけで改善することもあります。

  • 減量:首周りの脂肪を減らすことで、気道が広がりやすくなります。
  • 節酒:アルコールは筋肉を緩ませ、気道の閉塞を悪化させるため、就寝前の飲酒は控えます。
  • 横向き寝:仰向けに寝ると舌が落ち込みやすいため、横向きで寝る工夫(枕の調整など)をします。

便秘症

病気について

便秘症とは、単に「毎日便が出ない」ということだけではなく、「本来体から出すべき便を十分量、かつ快適に排出できていない状態」を指します。

排便の回数が週に3回未満である場合はもちろん、毎日出ていたとしても「便が硬くて出すのがつらい」「残便感(すっきりしない感じ)がある」「お腹が張って苦しい」といった症状があれば、それは便秘症です。原因は、水分や食物繊維の不足、運動不足、腹筋力の低下、便意の我慢、ストレス、加齢による腸の動きの低下など多岐にわたります。また、他の病気の治療薬の副作用で便秘になることもあります。

  • 放置した場合のリスク
    腸内に長く留まった便は、水分がどんどん吸収されて硬くなり、さらに出にくくなるという悪循環に陥ります。無理にいきむことで痔(きれ痔・いぼ痔)の原因になるほか、お腹の張り、食欲不振、肌荒れ、頭痛、イライラなどを引き起こします。高齢者の場合、硬い便が腸に詰まる「糞便塞栓(ふんべんそくせん)」や、腸に穴があく危険な状態になることもあるため、軽視できません。

主な診断方法

丁寧な問診をベースに、他の重篤な病気が隠れていないかを慎重に見極めます。

  • 問診・触診:排便の頻度、便の硬さ(うさぎのフンのようか、泥状かなど)、いつから続いているか、お腹の張りや腹痛の有無などを詳しくお聞きします。また、お腹を触って便が溜まっているか、腸の動きはどうかを確認します。
  • 画像検査(レントゲン・超音波):お腹のレントゲン撮影(X線)やエコー検査を行い、腸のどこに、どれくらいの量(またはガス)が溜まっているかを客観的に確認します。
  • 大腸内視鏡検査(大腸カメラ):※必要に応じて。急に便秘が始まった場合や、便に血が混じる、体重が減る、といった症状がある場合は、「大腸がん」などの腫瘍によって腸が狭くなっていないかを調べるために、大腸カメラを行うことがあります。

主な治療

単に強い下剤で無理やり出すのではなく、自然に近い排便習慣を取り戻すことを目指します。

1. 生活習慣と食事の改善(治療の基本)
  • 水分をしっかり摂る:朝起きたらまずコップ1杯のお水を飲むと、腸が刺激されて動き出します。1日を通してこまめな水分補給が大切です。
  • 食物繊維を摂る:便のボリュームを増やす「不溶性食物繊維(根菜、穀物など)」と、便を柔らかくする「水溶性食物繊維(海藻、果物、もち麦など)」をバランスよく摂ります。
  • 規則正しい排便習慣:朝食後は最も便意が起こりやすい時間です。出そうになくても、毎朝決まった時間にトイレに行く習慣をつけましょう。「便意を我慢しない」ことも鉄則です。
  • 適度な運動とマッサージ:ウォーキングは腸の動きを活発にします。お腹を「の」の字に優しくマッサージするのも効果的です。
2. 薬物治療

生活習慣の改善で追いつかない場合、お薬を使用します。近年、新しいタイプの優れた便秘薬が登場し、選択肢が広がっています。

  • 浸透圧性下剤(酸化マグネシウムなど):便に水分を集めて柔らかくし、自然な排便を促すお薬です。お腹が痛くなりにくく、長期連用しても癖になりにくいのが特徴です。
  • 上皮機能変容薬・胆汁酸トランスポーター阻害薬(新薬):腸内への水分分泌を増やしたり、腸の動きを高めたりする、自然な排便に近い状態を作る新しいお薬です。
  • 刺激性下剤(センナなど):腸の神経を直接刺激して無理やり動かすお薬です。効果は強いですが、連用すると「薬に頼らないと腸が動かなくなる(耐性)」が起きるため、頓服(どうしても出ないときだけ)として一時的に使用します。

過敏性腸症候群 (IBS)

病気について

過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)とは、お腹の痛みや不快感とともに、便秘や下痢などの便通異常が慢性的に続く病気です。

最大の特徴は、大腸カメラなどの検査をしても、炎症や潰瘍、腫瘍といった「目に見える異常(構造的な異常)がまったく見つからない」ことです。それにも関わらず症状が出るのは、ストレスや自律神経の乱れ、過去の感染症などをきっかけに、大腸のコントロール機能が過敏(デリケート)になってしまっているためです。20〜40代の比較的若い世代に多く、精神的なストレスや緊張(通勤・通学、試験、会議など)をきっかけに症状が出やすい傾向にあります。

  • 主に4つのタイプに分類されます
    1. 下痢型:突然の激しい腹痛とともに、水のような便が出る(男性に多い)。
    2. 便秘型:お腹が張って痛み、コロコロとした硬い便しか出ない(女性に多い)。
    3. 混合型:数日おきに下痢と便秘を交互に繰り返す。
    4. 分類不能型:上記のいずれにも当てはまらない、ガスの溜まりなどが主症状のタイプ。
  • 放置した場合のリスク
    命に関わる病気ではありませんが、「また電車の中でお腹が痛くなったらどうしよう」「近くにトイレがない場所に行けない」といった強い不安から、通勤・通学や外出が困難になるなど、日常生活や社会生活に深刻な支障(QOLの低下)をきたします。

主な診断方法

国際的な診断基準(ローマIV基準)に照らし合わせながら、慎重に診断します。

  • 診断の目安(ローマIV基準の要約)
    最近3ヶ月間、月に3日以上、お腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、以下の3つのうち2つ以上に当てはまる場合。
    1. 排便すると、お腹の痛みが和らぐ(または変わる)
    2. 症状とともに、排便の回数(増える、または減る)が変わる
    3. 症状とともに、便の形(硬くなる、または柔らかくなる)が変わる
  • 除外診断(検査)
    「本当に他の病気がないか」を確認することが極めて重要です。特に、体重減少、血便、発熱、50歳以上での発症などの「危険信号(レッドフラッグ)」がある場合は、大腸がんや炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)を否定するために、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)や血液検査、便潜血検査を行います。何も異常がないことが確認されて初めて、過敏性腸症候群と確定診断されます。

主な治療

治療のゴールは、症状をゼロにすることではなく、「症状とうまく付き合いながら、普段どおりの社会生活をラクに送れるようにすること」です。

1. ライフスタイルと食事の見直し
  • ストレス管理:十分な睡眠をとり、リラックスできる時間を作ります。
  • 食生活の改善:暴飲暴食を避け、確実な時間に3食摂ることで腸のペースを整えます。下痢型の方は、冷たいもの、辛いもの、アルコールなどの刺激物を控えます。
  • 低FODMAP(フォドマップ)食の検討:腸で吸収されにくく、発酵してガスや腹痛の原因になりやすい特定の糖質(小麦、豆類、牛乳、一部の果物など)を一時的に控える食事法が、症状改善に有効な場合があります。
2. 薬物治療

症状のタイプや程度に合わせて、きめ細かくお薬を処方・調整します。

  • 高分子重合体(ポリフル / コロネル):腸の中で水分を吸収して便の硬さをほどよく保つお薬です。下痢型・便秘型どちらにも使え、腸の調子を根本から整えます。
  • 消化管運動調律薬(セレキノンなど):腸の動きが早すぎる時は抑え、遅すぎる時は促す、腸の動きのコントロールを調整するお薬です。
  • 下痢型専用薬(イリボー):腸のセロトニンという物質の働きを抑え、腸の過剰な動きと痛みの伝達をブロックします(主に男性の下痢型に非常に効果的です)。
  • 便秘型専用薬(リンゼス):腸への水分分泌を増やして便を柔らかくするとともに、腸の痛みを和らげる効果があります。
  • 乳酸菌製剤(整腸薬):腸内環境を整えます。
  • 抗不安薬 / 漢方薬:ストレスや緊張が強い場合、精神的な緊張を和らげるお薬や、お腹の緊張をほぐす漢方薬(桂枝加芍薬湯など)がとてもよく効くことがあります。

感染性胃腸炎

病気について

感染性胃腸炎とは、ウイルスや細菌、寄生虫などの病原体が口から体内に入り、胃や腸の粘膜に感染して炎症を起こす病気です。一般的に「お腹の風邪」と呼ばれることもあります。原因となる病原体は季節や環境によって異なります。

  • ウイルス性(主に冬に流行):ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど。カキなどの二枚貝の生食や、感染した人の手を介して感染します。
  • 細菌性(主に夏に流行):カンピロバクター(鶏肉など)、サルモネラ(卵や肉など)、黄色ブドウ球菌、病原大腸菌(O157など)。いわゆる「食中毒」の原因となるものです。
  • 主な症状:突然の激しい吐き気・嘔吐、下痢(水様便)、腹痛、そして発熱や全身のだるさが現れます。ウイルス性は比較的短期間(1〜3日)で回復することが多いですが、細菌性は高熱が出たり、便に血が混じったり(血便)することがあり、重症化しやすい傾向があります。
  • 注意すべきリスク:脱水症
    何度も吐いたり下痢を繰り返したりすることで、体内の水分と塩分が急激に失われ、脱水症を起こします。特に小さな子どもや高齢者は、短時間で重症化しやすいため厳重な注意が必要です。

主な診断方法

基本的には、患者さんの症状や周囲の流行状況、直近の食事内容(生の鶏肉や貝類を食べていないかなど)をお聞きする「臨床診断」を行います。

  • 問診と身体診察:いつから症状が出たか、嘔吐や下痢の回数、お腹の痛む場所を確認し、皮膚や口の中の乾燥具合から脱水の程度を評価します。
  • 糞便検査(必要に応じて):症状が重い場合、血便がある場合、あるいは周囲への二次感染を防ぐ必要がある場合(食品を扱う仕事の方など)には、便を採取して原因菌を特定する「便培養検査」や、特定のウイルスを検出する「迅速キット検査」を行います。

主な治療

多くの感染性胃腸炎は、原因を根本から治す特効薬(抗ウイルス薬など)がありません。そのため、体から病原体が自然に排出されるのを待ちながら、症状を和らげる「対症療法」が中心となります。

1. 水分・電解質の補給(治療の最優先事項)

脱水を防ぐことが最も重要です。一度にたくさん飲むと吐いてしまうため、「スプーン1杯やペットボトルのキャップ1杯程度の量を、5〜10分おきにこまめに飲む」のがコツです。

  • 適しているもの:経口補水液(OS-1など)がベストです。スポーツドリンクは糖分が高く塩分が足りないため、少し薄めて塩をひとつまみ足すと良いでしょう。緑茶やウーロン茶、ジュースは腸を刺激するので避けます。
2. 薬物治療
  • 整腸薬(乳酸菌など):乱れた腸内細菌のバランスを整え、回復を早めます。
  • 吐き気止め:吐き気が強くて水分が全く摂れない場合に、一時的に使用します。
  • 抗菌薬(抗生物質):ウイルス性には全く効きません。細菌性で高熱や血便を伴う重症の場合にのみ、医師の判断で処方されます。

強力な「下痢止め」は原則使いません!
下痢は、体が「毒素や病原体を外に追い出そうとする防御反応」です。市販の下痢止めなどで無理に止めてしまうと、病原体が腸内に留まり、かえって病気を長引かせたり重症化させたりすることがあります。自己判断で下痢止めを飲むのは避け、当院にご相談ください。

脂肪肝

病気について

脂肪肝とは、食べすぎや運動不足などにより、消費されなかった糖質や脂質が「中性脂肪」に形を変え、肝臓の細胞に過剰に溜まってしまった状態のことです。正常な肝臓の脂肪割合は5%以下ですが、これが30%以上になった状態を脂肪肝と呼びます。いわば「肝臓のメタボ(フォアグラ状態)」です。

原因によって大きく2つに分類されます。

  1. アルコール性脂肪肝:長年の多量飲酒が原因。
  2. 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH):お酒をほとんど飲まないのに起こる脂肪肝。肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病に伴って起こります。
  • 自覚症状がないまま静かに進行する
    肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、脂肪が溜まって機能が落ちてきても、痛みや体のだるさなどの症状は全く出ません。そのため、健康診断の血液検査や超音波検査で偶然見つかるケースがほとんどです。
  • 放置した場合のリスク
    「ただの脂肪」と侮って放置すると、約10〜20%の割合で肝臓に慢性の炎症が起こる「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:ナッシュ)」へと進行します。これが長年続くと、肝臓の細胞が徐々に硬くなり(繊維化)、元に戻らない「肝硬変」や、さらには「肝がん」へと進行することが分かっています。また、脂肪肝がある人は、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患を起こすリスクも高いことが指摘されています。

主な診断方法

健康診断の異常をきっかけに、さらに詳しい検査を行って診断を確定します。

  • 血液検査(肝機能数値のチェック):AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPといった、肝細胞が壊れたときに血液中に漏れ出す酵素の数値をチェックします。特に脂肪肝では、ALTの値がASTよりも高くなる傾向があります。また、ヒアルロン酸や4型コラーゲンといった数値を測定し、肝臓の「硬さ(繊維化の進み具合)」を推測することもあります。
  • 腹部超音波検査(エコー検査):お腹に超音波を当てて、肝臓の様子を画像で観察します。脂肪が溜まった肝臓は、エコーの画面上で「白く輝いて(ブライトリバー)」見えます。体に痛みや負担をかけずに、脂肪肝の有無を高い精度で診断できる非常に優れた検査です。
  • CT / MRI検査・肝生検(必要に応じて):さらに詳しく脂肪の量や組織の状態を調べるため、CTやMRIを行うことがあります。また、炎症の程度(NASHかどうか)や繊維化の段階を100%確実に診断するために、皮膚から細い針を肝臓に刺して組織の一部を採取する「肝生検(かんせいけん)」を行う場合もあります。

主な治療

脂肪肝の治療に、特効薬のようなお薬はありません。治療の根本であり、最も効果的なのは「減量と生活習慣の見直し」です。

1. 体重管理と食事療法(これが一番のクスリです)

現在の体重の「3%〜5%」を減量するだけで、肝臓の脂肪は劇的に減少します(7〜10%減らすと、起きてしまった炎症や繊維化も改善することが分かっています)。

  • 糖質と脂質のコントロール:ご飯、パン、麺類などの炭水化物の摂りすぎを控え、特に果物やジュースに含まれる「果糖」は肝臓でダイレクトに脂肪になりやすいため、控えるようにします。油っこい食事を避け、野菜やタンパク質(大豆、鶏ささみ、白身魚など)をバランスよく摂りましょう。
  • 禁酒・節酒:お酒が原因の(またはお酒も飲む)方の場合は、禁酒が最も効果的な治療です。
2. 運動療法

筋肉を動かすことで、肝臓に溜まった脂肪がエネルギーとして消費されます。ウォーキングや軽いジョギング、サイクリングなどの有酸素運動を、1日30分以上、週3回以上を目安に定期的に行いましょう。また、スクワットなどの軽い筋トレを組み合わせると、基礎代謝が上がり、さらに効果的です。

3. 薬物治療(持病の治療を兼ねて)

糖尿病、高血圧、脂質異常症などの持病が背景にある場合、それらの治療薬(一部の糖尿病薬や高脂血症薬には、肝臓の脂肪を減らす効果が認められているものがあります)を適切に使用することで、脂肪肝の改善を図ります。ビタミンEなどの抗酸化剤が処方されることもあります。

インフルエンザ

病気について

インフルエンザとは、インフルエンザウイルスに感染することによって起こる、感染力の非常に強い呼吸器感染症です。一般的な「かぜ」とは異なり、急激に発症し、全身症状が強く出るのが特徴です。

日本では例年11月下旬〜12月上旬頃から流行が始まり、1月〜3月頃にピークを迎えます。主な感染経路は、感染者の咳やくしゃみによる「飛沫感染」と、ウイルスが付着した手で口や鼻を触る「接触感染」です。

  • 主な症状:38℃以上の突然の高熱とともに、頭痛、全身のだるさ(倦怠感)、筋肉痛・関節痛などの全身症状が強く現れます。これらに少し遅れて、咳、鼻水、喉の痛みといった呼吸器症状が現れます。
  • 放置した場合のリスク(特に注意が必要な方):多くの方は1週間ほどで自然に回復しますが、高齢の方、乳幼児、妊婦、持病(慢性心肺疾患、糖尿病、腎障害など)のある方は重症化しやすく、肺炎やインフルエンザ脳症といった命に関わる合併症を引き起こすリスクがあります。

主な診断方法

主に問診(周囲の流行状況や症状の経過)と、迅速検査キットを用いて診断します。

  • インフルエンザ迅速抗原検査:鼻の奥に綿棒を挿入して粘液を採取する、最も一般的な検査です。10〜15分程度で結果が分かります。
  • 検査を受けるタイミングの注意点
    発熱などの症状が出てから「12時間未満」の非常に早い段階では、体内のウイルス量が少なすぎて、感染していても検査で「陰性(正常)」と出てしまうことがあります(偽陰性)。正確な判定のためには、発熱後12時間〜48時間以内の受診をおすすめします。
  • 高感度検査機器(導入している場合):最近では、発熱後すぐ(数時間以内)のウイルス量が少ない段階でも、ウイルスを増幅させて早期に検出できる高感度な検査機器を導入する医療機関も増えています。

主な治療

治療の基本は、抗インフルエンザ薬の服用と、十分な休養・水分補給です。

1. 薬物治療

発症から48時間以内に抗インフルエンザウイルス薬を使用することで、ウイルスの増殖を抑え、発熱の期間を1〜2日短縮し、症状を軽くする効果があります(48時間を過ぎてからの投与は効果が限定的になります)。

  • 内服薬(飲み薬):タミフル(5日間服用)や、1回飲むだけで完結するゾフルーザなどがあります。
  • 吸入薬:リレンザやイナビルなど、薬を直接気道に吸い込むタイプです。
  • 対症療法:高熱や頭痛がつらい場合は、安全性の高い解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)を併用します。※市販の解熱剤の中には、インフルエンザの際に飲むと重篤な副作用(ライ症候群など)を起こすものがあるため、自己判断での服用は避けてください。
2. 自宅での過ごし方と出席・出勤停止期間
  • 安静と水分補給:高熱による脱水を防ぐため、経口補水液やスポーツドリンクなどでこまめに水分を補給し、睡眠を十分に摂ってください。
  • 法律で定められた出席停止期間(学校保健安全法):「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」は学校や幼稚園への登校が禁止されています。大人の就業制限については会社の就業規則に従いますが、これに準じることが推奨されます。

COVID-19 (新型コロナウイルス感染症)

病気について

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)は、SARS-CoV-2というウイルスによって引き起こされる感染症です。非常に強い感染力を持ち、ウイルスの変異(オミクロン株など)を繰り返しながら流行を続けています。

感染経路は、咳やくしゃみ、会話時のしぶきを吸い込む「飛沫感染」「エアロゾル感染」と、ウイルスが付着した物に触れた手で顔を触る「接触感染」です。

  • 主な症状:発熱、咳、喉の痛み、鼻水、だるさなど、初期症状はインフルエンザや一般的なかぜと酷似しています。変異株によっては、頭痛、筋肉痛、下痢、また特徴的な症状として「味覚・嗅覚の障害(味がしない、においが分からない)」が出ることがあります。
  • 放置した場合のリスク:軽症で済む方が大半ですが、一部の患者さんは発症から1週間前後で急激に悪化し、ウイルス性肺炎から呼吸不全(ARDS)を起こすことがあります。また、治癒した後も、強いだるさ、息切れ、ブレインフォグ(頭にモヤがかかったような状態)などの「後遺症(罹患後症状)」が長期間続くケースがあることも特徴です。

主な診断方法

インフルエンザと同様に、問診と検査キットを用いて診断します。

  • 新型コロナウイルス抗原定性検査(迅速キット):鼻の奥の粘液(または唾液)を採取し、15〜30分程度で結果を判定します。現在は、インフルエンザと同時に判定できる「同時検査キット」が広く使われています。
  • PCR検査 / 核酸増幅検査:ウイルスの遺伝子を増幅させて検出する、最も精度の高い検査です。抗原検査で陰性であっても感染が強く疑われる場合などに行うことがあります(結果判明までに数時間〜翌日かかる場合があります)。

主な治療

軽症の場合は一般的なかぜと同様に対症療法が中心となりますが、重症化リスクのある方には専用の抗ウイルス薬があります。

1. 薬物治療
  • 対症療法(軽症の方):解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンやイブプロフェンなど)で熱や喉の痛みを和らげ、咳止めや鼻水の薬を処方します。
  • 抗ウイルス薬(重症化リスクのある方):高齢者、基礎疾患(糖尿病、慢性腎臓病、COPDなど)がある方、肥満の方など、重症化する危険性が高いと医師が判断した場合に、発症初期(5日以内)からパキロビッドパックやラゲブリオ、ゾコーバなどの抗ウイルス薬を処方します。
2. 自宅での過ごし方と療養期間の目安
  • こまめな水分補給と隔離:同居しているご家族への感染を防ぐため、可能であれば部屋を分け、換気を徹底し、共有スペースではマスクを着用してください。
  • 外出を控える推奨期間:法律による一律の外出自粛要請はなくなりましたが、現在は「発症日を0日目として5日間は外出を控えること」、かつ「症状が軽快してから24時間は経過をみること」が推奨されています。また、発症から10日間はマスクの着用など周囲への配慮が必要です。

肺炎

病気について

肺炎とは、主に細菌やウイルスなどの病原体が肺の奥にある「肺胞(はいほう)」という小さな袋に感染し、そこで激しい炎症を起こす病気です。

一般的な「かぜ」や「気管支炎」は、喉や気管支といった空気の通り道の炎症ですが、肺炎は酸素を取り込む肺そのものの炎症であるため、より深刻で命に関わる状態になりやすいのが特徴です。日本の成人肺炎の原因菌で最も多いのは「肺炎球菌」です。

  • 主な症状:38℃以上の高熱、長く続く激しい咳、黄色や緑色の粘り気のある痰(たん)、深く息を吸ったときの胸の痛み、息切れ・息苦しさなどが現れます。
  • 高齢者の肺炎は「熱が出ない」ことも!
    高齢の方の場合、肺炎になっても熱や咳が出ないことが珍しくありません。「なんとなく元気がない」「食欲がない」「いつもよりウトウトしている」「急に足元がふらつく」といった、一見肺炎とは関係なさそうな症状(非定型症状)だけのことがあるため、周囲の注意深い観察が必要です。
  • 放置した場合のリスク:治療が遅れると肺全体に炎症が広がり、重症の呼吸不全に陥ります。さらに菌が血液中に侵入して全身に広がる「敗血症(はいけつしょう)」を起こすと、多臓器不全となり命を落とす危険性が非常に高くなります。現在でも日本の死亡原因の上位に入る油断できない病気です。

主な診断方法

かぜとの見極め、および肺炎の範囲や原因を特定するために、以下の検査を迅速に行います。

  • 胸部X線(レントゲン)検査 / 胸部CT検査:肺炎の診断に不可欠な検査です。健康な肺はレントゲンで黒く写りますが、肺炎を起こして膿や炎症の液体が溜まると、その部分が「白く濁った影」として写ります。より詳細に調べるためにCT検査を行うこともあります。
  • 血液検査:炎症の強さを表す数値(CRPや白血球数)を測定し、重症度を評価します。
  • 痰(たん)の検査(尿中抗原検査):原因となっている細菌(肺炎球菌やレジオネラなど)を特定するため、痰を顕微鏡で観察したり培養したりします。また、尿を用いて原因菌の成分を検出する迅速検査も行います。
  • 経皮的動脈血酸素飽和度(パルスオキシメーター):指先にセンサーをあてて、血液中に酸素が十分に届いているかを測定し、呼吸不全の有無を調べます。

主な治療

原因に合わせたお薬の投与と、全身のサポートを行います。重症度によっては入院治療が必要です。

1. 抗生物質(抗菌薬)の投与

細菌性肺炎が疑われる場合は、原因菌に効果のある抗生物質を速やかに開始します。軽症であれば飲み薬で自宅療養が可能ですが、中等症以上や高齢者の場合は、確実かつ迅速に効かせるために、入院して点滴で抗生物質を投与します。

2. 対症療法と呼吸管理
  • 痰を出しやすくする薬(去痰薬)や解熱剤を使用します。
  • 体内の酸素が不足している場合は、鼻やマスクから酸素吸入を行います。
3. 予防がとても重要です(肺炎球菌ワクチン)

高齢の方や持病のある方は、肺炎の原因として最も多く、重症化しやすい「肺炎球菌」の感染を予防する肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されています(定期接種の対象年齢があります。当院でもご相談を承っています)。

気管支喘息

病気について

気管支喘息とは、空気の通り道である「気管支」に、慢性的な(長引く)炎症が起こることで、気道が敏感になり、狭くなってしまう病気です。

この炎症は、細菌やウイルスによるものではなく、アレルギー(ダニ、ハウスダスト、ペットの毛など)や環境要因によるものです。炎症が続いている気道は非常にデリケートになっており、タバコの煙、冷たい空気、ストレス、かぜ、運動などのわずかな刺激にも過剰に反応し、気管支の周りの筋肉が収縮して空気の通り道が塞がってしまいます(喘息発作)。

  • 主な症状:激しい咳とともに、呼吸をするときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音(喘鳴:ぜんめい)がするのが特徴です。特に夜間から明け方にかけて、または季節の変わり目などに症状が出やすくなります。ひどくなると、息が苦しくて横になって眠れず、座らないと呼吸ができない状態(起座呼吸)になります。
  • 放置した場合のリスク:「発作が起きたときだけ市販の薬でしのぐ」というような不適切な治療を続けていると、気管支の壁がだんだん厚く硬くなり、元の柔らかい気道に戻らなくなってしまいます(リモデリング)。これにより、発作が治まりにくくなり、最悪の場合は窒息(喘息死)に至る危険な状態になるため、毎日の正しいコントロールが不可欠です。

主な診断方法

症状の特徴を詳しくお聞きするとともに、呼吸の機能を調べる検査を行います。

  • 呼吸機能検査(スパイロメトリー):機械の筒をくわえて、息を大きく吸ったり、勢いよく吐き出したりして、肺の空気の出し入れの力を測定します。気道が狭くなって空気の通りが悪くなっていないか(閉塞性換気障害)を数値化します。
  • 呼気一酸化窒素(FeNO)検査:吐き出した息(呼気)の中に含まれる一酸化窒素の濃度を測定します。気管支にアレルギー性の炎症(好酸球性の炎症)が起きているとこの数値が高くなるため、喘息の診断や治療効果の判定に非常に有用な検査です。
  • 血液検査(特異的IgE抗体検査):何に対するアレルギーがあるのか(ダニ、ハウスダスト、花粉など)を特定するために行います。

主な治療

現在の喘息治療は、「発作が起きたときだけ止める」のではなく、「発作が起きないように毎日気道の炎症を抑え続ける」ことが世界的な標準となっています。お薬は大きく分けて2つの種類があり、これらを正しく使い分けることが治療の鍵です。

1. 長期管理薬(コントローラー):毎日使う薬

発作がないときも毎日欠かさず使用し、気管支の慢性的な炎症を根本から鎮めるためのお薬です。

  • 吸入ステロイド薬(最重要):非常に少量のステロイド薬を直接気道に吸い込ませるため、全身の副作用がほとんどなく、安全かつ強力に炎症を抑えることができます。現在、喘息治療の主役です。
  • 長時間作用性β2刺激薬(気管支拡張薬):気管支を広げて呼吸をラクにするお薬で、吸入ステロイドと合剤になっているものが多く使われます。
  • 抗ロイコトリエン薬(飲み薬):アレルギー反応を抑え、気管支が狭くなるのを防ぎます。
2. 発作治療薬(リリーバー):発作のときだけ使う薬

突然の激しい発作(ゼーゼー、息苦しさ)が起きたときに、緊急避難的に使用するお薬です。

  • 短時間作用性吸入β2刺激薬(メプチンなど):吸入すると数十秒〜数分で急速に気管支の筋肉を緩め、空気の通り道を広げます。

注意:この薬は「その場の苦しさを取る」だけのもので、気道の炎症を治す力はありません。これを使用する回数が増えているということは、喘息のコントロールが悪化しているサインですので、すぐに受診してください。

COPD (慢性閉塞性肺疾患)

病気について

COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性閉塞性肺疾患)とは、タバコの煙などの有害なガスを長年吸い込み続けることによって、気管支や肺が慢性的な炎症を起こし、空気の出し入れがスムーズにできなくなる病気です。以前は「肺気腫」や「慢性気管支炎」と呼ばれていた病気を含みます。

原因の9割以上が「喫煙」であり、まさに「肺の生活習慣病」とも言える病気です。40歳以上の喫煙者の約10人に1人が発症していると推定されていますが、気づかれずに見過ごされているケースが非常に多いのが現状です。

  • 主な症状:初期は「階段や坂道を上るときに、周りの人より息が切れる(労作性呼吸困難)」という症状から始まります。「年齢のせい(加齢)」と思って見過ごされがちですが、進行すると平地を歩くだけでも息切れがするようになり、長引く咳や、ネバネバした痰(たん)が毎日のように出るようになります。
  • 放置した場合のリスク:壊れてしまった肺胞(肺の奥の組織)は、治療をしても元に戻ることはありません。放置すると徐々に進行し、最終的には24時間体制で酸素のボンベや機械を手放せない「在宅酸素療法(HOT)」が必要になります。また、かぜやインフルエンザなどの感染症をきっかけに、急激に呼吸不全が悪化する「急性増悪(ぞうあく)」を起こし、命の危険にさらされることもあります。

主な診断方法

長年の喫煙歴の確認とともに、呼吸の力を正確に調べる検査を行います。

  • 呼吸機能検査(スパイロメトリー):COPDの診断に最も重要な検査です。息を限界まで吸い込み、最初の1秒間にどれだけの空気の量を吐き出せるか(1秒量)を測定します。この割合(1秒率)が、気管支拡張薬を使った後でも70%未満である場合、気道が慢性的に狭くなっていると判断され、COPDと診断されます。
  • 胸部CT検査 / X線(レントゲン)検査:肺全体の形や、肺胞が壊れてスカスカになっていないか(肺気腫の変化)を確認します。また、症状が似ている肺がんや心不全、肺結核などの他の病気が隠れていないかをチェックします。

主な治療

壊れた肺の組織を完全に元に戻す治療法はありませんが、適切な治療によって「進行を止め、息苦しさを和らげ、普段どおりの生活を維持すること」が可能です。

1. 禁煙(すべての治療の絶対条件)

どのような治療を行うにしても、タバコを吸い続けていては効果がありません。禁煙することで、肺機能の低下のスピードを緩め、病気の進行を確実に抑えることができます。当院では禁煙外来によるサポートも行っています。

2. 薬物治療(吸入薬が中心)

気管支を広げて、空気の通りを良くするための「吸入気管支拡張薬」を毎日定期的に使用します。

  • 抗コリン薬 / β2刺激薬:これらを単剤、または組み合わせた吸入薬を使用することで、息切れが大幅に軽くなり、運動や外出がラクになります。
  • 吸入ステロイド薬:喘息の成分が合併している場合や、急性増悪を何度も繰り返す場合に併用します。
3. 呼吸リハビリテーションとワクチン接種
  • 呼吸リハビリ:効率的な呼吸の仕方(口すぼめ呼吸など)の練習や、呼吸に関わる筋肉を維持するための軽い運動療法を行います。
  • 感染予防:かぜやインフルエンザ、肺炎球菌の感染によって急激に悪化(増悪)するのを防ぐため、毎年のインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種が強く推奨されています。

アレルギー性鼻炎 (花粉症・通年性)

病気について

アレルギー性鼻炎とは、鼻の粘膜に入り込んだ特定の物質(アレルゲン)に対して、体が過剰な免疫反応(アレルギー反応)を起こし、鼻水や鼻づまりなどの症状を引き起こす病気です。

大きく分けて2つのタイプがあります。

  1. 季節性アレルギー性鼻炎(花粉症):スギ、ヒノキ(春)、カモガヤ(初夏)、ブタクサ、ヨモギ(秋)など、特定の季節の花粉が原因。
  2. 通年性アレルギー性鼻炎:ダニ、ハウスダスト、ペットの毛、カビなどが原因で、季節に関係なく1年中症状が続きます。
  • 主な症状(3大症状)
    • 発作的で連発するくしゃみ
    • 水のようなサラサラとした透明な鼻水
    • 頑固な鼻づまり(鼻閉)
    これらに加えて、目の痒みや充血、喉のイガイガ感、頭が重いといった症状を伴うことが多くあります。
  • 放置した場合のリスク:命に関わることはありませんが、鼻づまりによる口呼吸で喉を痛めやすくなったり、睡眠の質が落ちて日中の強い眠気や集中力低下を招いたりします。また、鼻の奥の換気が悪くなることで、次に解説する副鼻腔炎(ちくのう症)を合併しやすくなります。

主な診断方法

症状の特徴をお聞きし、鼻の粘膜の観察と原因物質の特定を行います。

  • 鼻鏡検査(鼻内の観察):鼻の穴から光を当てて粘膜を直接観察します。アレルギー性鼻炎の鼻粘膜は、かぜの時とは異なり、「白っぽく腫れて、水のような鼻水が溜まっている」のが特徴です。
  • 血液検査(特異的IgE抗体検査):少量の採血により、何に対するアレルギーがあるのか(スギなのか、ダニなのか等)を一度に数十種類調べることができます。原因物質を特定することは、今後の対策を立てる上で非常に重要です。

主な治療

お薬による「対症療法」と、根本的な体質改善を目指す「免疫療法」があります。

1. 薬物治療
  • 抗ヒスタミン薬(飲み薬):くしゃみや鼻水を抑えるお薬です。最近の新しいお薬は、昔のものに比べて「眠気」の副作用が非常に少なくなっています。
  • 鼻噴霧用ステロイド薬(点鼻薬):鼻の粘膜の炎症を局所的に抑える強力な薬です。スプレータイプで鼻に直接吹き付けます。血液中にほとんど吸収されないため安全性が高く、鼻づまりにも強い効果を発揮します。
  • ロイコトリエン受容体拮抗薬:主に「鼻づまり」の症状が強い方に効果的な飲み薬です。
2. アレルゲン免疫療法(根治療法)

アレルギーの原因物質(スギやダニ)の成分を、毎日少量ずつ体内に取り込むことで、体を徐々にアレルゲンに慣らし、根本的な体質改善(症状が出ない、または非常に軽くする)を目指す治療法です。

  • 舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう):自宅で薬(タブレット)を舌の下にしばらく保持して飲み込む方法です。数年間にわたり毎日続ける必要がありますが、約7〜8割の方に高い効果が見られます(※花粉が飛散していない時期から治療を開始する必要があります)。当院でも相談・治療を行っております。

副鼻腔炎 (ふくびくうえん・ちくのう症)

病気について

副鼻腔炎とは、鼻の穴(鼻腔)の周りにあるいくつかの空洞「副鼻腔(ふくびくう)」に炎症が起こり、膿(うみ)が溜まってしまう病気です。一般的に「ちくのう症」とも呼ばれます。

多くは、かぜのウイルスや細菌の感染、またはアレルギー性鼻炎によって鼻の粘膜が腫れ、副鼻腔と鼻腔をつなぐ小さな穴(自然口)が塞がってしまうことで発症します。空洞の中に分泌物や膿が閉じ込められ、逃げ場を失うことで激しい症状を起こします。発症から4週間以内を「急性」、3ヶ月以上続く場合を「慢性」と呼びます。

  • 主な症状
    • 粘り気のある黄色や緑色のドロドロした鼻水
    • 鼻水が喉の奥に垂れて落ちる(後鼻漏:こうびろう)による長引く咳
    • 頑固な鼻づまり、匂いが分からなくなる(嗅覚障害)
    • 顔面の痛み・圧迫感:膿が溜まる場所によって、おでこ、目の間、頬、奥歯のあたりが激しく痛むのが特徴です(下を向くと痛みが高くなります)。
  • 放置した場合のリスク:慢性の状態(慢性副鼻腔炎)になると、鼻の中に「鼻ポリープ(鼻たけ)」というキノコのような良性のポリープができ、さらに鼻づまりや嗅覚障害が悪化します。また、非常に稀ですが、副鼻腔は脳や目に近いため、炎症が周囲に波及して目の周りが腫れ上がったり、髄膜炎などの重篤な合併症を引き起こしたりすることがあります。

主な診断方法

鼻の中の観察と、副鼻腔の中の状態を映し出す画像検査を行います。

  • 鼻内視鏡検査(ファイバースコープ):細いカメラを鼻から挿入し、副鼻腔からの出口にドロドロした膿が出ていないか、鼻ポリープができていないかを直接確認します。
  • 画像検査(レントゲン / CT検査):顔のレントゲンを撮影します。空気で満たされている正常な副鼻腔は真っ黒に写りますが、炎症が起きたり膿が溜まったりしていると「白く濁って」写ります。より詳細な構造や、手術を検討する場合にはCT検査を行います。

主な治療

急性か慢性かによって治療期間や使うお薬が異なりますが、基本的には鼻の中をきれいにする処置とお薬の組み合わせです。

1. 医療機関での処置(局所治療)
  • 鼻・副鼻腔の洗浄:鼻の中に溜まったドロドロの膿を吸引機できれいに吸い出します。
  • ネブライザー治療:抗生物質やステロイドを含む細かい霧状の薬を、鼻から直接吸入し、副鼻腔の奥まで薬を届けます。
2. 薬物治療
  • 急性副鼻腔炎の場合:細菌を殺すための「抗生物質(抗菌薬)」や、粘り気のある鼻水をサラサラにして出しやすくする「排膿促薬(去痰薬)」、痛みを抑える鎮痛薬を短期間(1〜2週間程度)しっかり服用します。
  • 慢性副鼻腔炎の場合:「マクロライド系抗生物質」を通常の半分の量で、2〜3ヶ月間にわたって長く飲み続ける治療(マクロライド少量長期投与)を行います。これは菌を殺すためではなく、粘膜の炎症自体を鎮めて元の健康な状態に戻すための、非常に効果的な治療法です。
3. 手術治療(お薬で治らない場合)

薬を長期間続けても改善しない頑固な慢性副鼻腔炎や、大きな鼻ポリープがある場合は、鼻の穴から内視鏡を入れて行う「内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)」を専門の病院と連携して検討します(体に傷が残らない内視鏡手術が主流です)。

尿路感染症

病気について

尿路感染症とは、尿の通り道(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に細菌が侵入し、そこで増殖して炎症を起こす病気の総称です。感染が起きる場所によって、大きく2つに分類され、症状や重症度が全く異なります。

  1. 下部尿路感染症(膀胱炎・尿道炎など):尿の出口に近い場所の炎症。熱は出ませんが、排尿時の不快な症状が出ます。
  2. 上部尿路感染症(腎盂腎炎:じんうじんえん):膀胱の細菌が尿管をさかのぼり、腎臓まで達してしまった炎症。全身の強い症状(高熱)が出ます。

女性は男性に比べて尿道が非常に短く(約3〜4cm)、出口が肛門や膣に近いという体の構造上、細菌(主に大腸菌)が尿道に侵入しやすいため、圧倒的に女性に多く見られる病気です。

  • 主な症状(場所による違い)
    • 膀胱炎の症状:排尿時の痛み、頻尿、残尿感などです。
    • 急性腎盂腎炎の症状:膀胱炎の症状に加えて、38℃以上の突然の高熱、ガタガタ震えるような寒気、腰や背中の激しい痛み、吐き気などが現れます。
  • 放置した場合のリスク:膀胱炎を放置すると、細菌が上へと侵入して腎盂腎炎を引き起こします。さらに、腎臓には太い血管が張り巡らされているため、腎臓の細菌が血液中に侵入して全身に広がる「敗血症(はいけつしょう)」という極めて危険な状態に陥ることがあります。急激な血圧低下や意識障害を起こし、命に関わる緊急事態になるため、高熱を伴う場合は一刻も早い治療が必要です。

主な診断方法

尿の中に細菌や炎症の跡がないかを調べる「尿検査」が最も重要です。

  • 尿検査(一般検査):採取した尿を試験紙や顕微鏡でチェックします。尿の中に炎症を戦う細胞である「白血球」や、原因となる「細菌」、あるいは「赤血球(血尿)」が混じっていないかを確認します。数分で結果が分かります。
  • 尿培養検査:尿を数日間培養して、「どんな名前の細菌が原因か」「どのお薬(抗生物質)が一番よく効くか」を正確に突き止めるための検査です。
  • 腹部超音波検査(エコー検査):腎盂腎炎が疑われる場合や、何度も尿路感染症を繰り返す場合に行います。腎臓が腫れていないか、尿の通り道を塞ぐような尿路結石や腫瘍などの異常がないか、尿がしっかり出し切れずに残っていないか(残尿)を調べます。

主な治療

原因となっている細菌を退治するため、抗生物質(抗菌薬)による治療が必須です。

1. お薬による治療(抗生物質)
  • 軽症(膀胱炎など)の場合:適切な抗生物質の飲み薬を3〜5日間ほどきっちり服用することで、速やかに改善します。
  • 重症(急性腎盂腎炎など)の場合:高熱や脱水、吐き気で薬が飲めないことが多いため、入院の上、点滴による強力な抗生物質の投与が必要です。熱が下がって全身状態が落ち着くまで、通常1〜2週間程度の治療を行います。
2. 水分補給(自宅でのケア)

薬を飲むと同時に、水分をいつもより多めに摂るようにしてください。尿の量を増やすことで、尿の通り道にいる細菌を物理的に外へ「洗い流す(フラッシング)」効果があり、回復を早めます。

膀胱炎 (急性)

病気について

膀胱炎とは、尿をためる袋である「膀胱」の粘膜に細菌が入り込み、繁殖して炎症を起こす病気です。尿路感染症の中で最も頻度が高く、特に20〜40代の健康な女性に非常に多く見られます。

原因菌の約8割は大腸菌です。女性は尿道が短いため、体調不良、寝不足、過労、ストレスなどで免疫力が落ちているときや、生理前後、性交渉の後、また寒さによる冷えや、トイレを長時間我慢したときなどをきっかけに、細菌が膀胱まで一気に侵入して発症します。

  • 主な症状(3大症状)
    1. 排尿時痛:おしっこを出し終わる終盤に、ジリジリ、ツーンとした鋭い痛みがあります。
    2. 頻尿(ひんにょう):膀胱が炎症で敏感になっているため、尿が少し溜まっただけで強い尿意を感じます。1時間に何度もトイレに行きたくなります。
    3. 残尿感:トイレを済ませた直後なのに、まだおしっこが残っているようなスッキリしない感じがします。
    ※これらに加えて、尿が白く濁ったり、粘膜から出血しておしっこがピンク〜赤色になる「血尿(肉眼的血尿)」が見られることもありますが、適切に治療すれば治りますので慌てずに受診してください。なお、原則として熱は出ません。

主な診断方法

問診で症状を確認し、簡単な尿検査でその場で診断が可能です。

  • 尿検査:診察の前に尿を採取していただきます。尿の中の白血球(炎症反応)と潜血(血液が混じっていないか)を調べます。尿中に白血球が多数見られれば、膀胱炎と確定診断されます。結果は数分で分かります。
  • 受診時のポイント:尿検査が必要となりますので、ご来院直前のトイレはできるだけ我慢してお越しください。

主な治療と予防

膀胱炎は、適切な初期治療を行えば非常に早く良くなる病気です。

1. 薬物治療

原因菌を退治する「抗生物質(抗菌薬)」の飲み薬を処方します。多くの場合、お薬を飲み始めて1〜2日で痛みなどのつらい症状は大幅に軽くなります。

重要な注意点
症状が消えたからといって、自己判断でお薬を途中でやめないでください。途中でやめると、生き残った一部の菌が「薬の効かない強い菌(耐性菌)」に変異し、再発しやすくなったり、治りにくくなったりします。必ず医師に指示された日数分(通常3〜5日間)をすべて飲み切ってください。

2. 日常生活での予防策(繰り返さないために)

女性は一度治っても再発しやすい傾向があります。以下のポイントを日頃から意識しましょう。

  • トイレを我慢しない:尿が膀胱に長く溜まるほど、細菌が増殖しやすくなります。
  • 水分をしっかり摂る:尿の回数を増やし、こまめに細菌を洗い流しましょう。
  • 前から後ろへ拭く:排便後の排泄ケアの際は、肛門の菌を尿道に近づけないよう、必ず「前から後ろ」に向けて拭く習慣をつけてください。
  • 免疫力を落とさない:疲労や睡眠不足、体の冷えは免疫力を下げ、細菌に負けやすくなります。規則正しい生活を心がけましょう。

偏頭痛 (片頭痛)

病気について

偏頭痛(片頭痛)とは、頭の片側(または両側)が、心臓の拍動に合わせて「ズキズキ」「ガンガン」と波打つように激しく痛む発作性の頭痛です。20〜40代の女性に特に多く見られます。

脳の血管が急激に拡張し、その周囲にある「三叉(さんさ)神経」という顔の神経が刺激されて炎症を起こすことが原因と考えられています。寝不足や寝すぎ、ストレス、気圧の変動(台風など)、特定の食べ物(チョコレートやワインなど)、女性ホルモンの変化などが引き金(トリガー)となります。

  • 主な症状と「前兆」
    頭痛発作は数時間から、長いと3日間ほど続きます。体を動かすと痛みが響くため、じっと寝込んでいるしかなくなります。また、「光や音、匂いに敏感になる(まぶしい、うるさいと感じる)」「吐き気・嘔吐を伴う」のも大きな特徴です。一部の人には、頭痛が始まる直前に、目の前にギザギザした光が現れて世界が見えにくくなる「閃輝暗点(せんきあんてん)」という前兆が現れます。
  • 放置した場合のリスク:「ただの頭痛だから」と市販の痛み止めを毎日のように飲みすぎていると、かえって脳の神経が敏感になり、薬が切れたときにまた頭痛が起きる「薬剤乱用頭痛(やくざいらんようずつう)」という、より治りにくい状態に陥ることがあります。

主な診断方法

頭痛の原因が、命に関わる「脳の病気(くも膜下出血や脳腫瘍など)」ではないかを見極めつつ、国際的な基準をもとに診断します。

  • 詳細な問診(頭痛ダイアリーの活用):いつから、どのくらいの頻度で、どんな痛みがあるか、吐き気や前兆はあるかを詳しくお聞きします。患者さんに「頭痛ダイアリー(日記)」をつけてもらい、痛みのパターンや引き金を客観的に分析します。
  • 画像検査(必要に応じて専門医療機関と連携):「これまでに経験したことがない猛烈な痛み」「急激に始まった頭痛」「手足の麻痺やしびれを伴う」といった危険なサイン(レッドフラッグ)がある場合は、脳自体の異常を否定するために、速やかにMRIやCT検査を行います。

主な治療

現在は、偏頭痛のメカニズムに合わせた非常に効果的なお薬が登場しています。

1. 薬物治療
  • 発作を鎮める薬(トリプタン製剤など):偏頭痛が始まった「初期(痛くなり始め)」に服用することで、拡張した脳の血管を収縮させ、痛みの原因を根本から強力にブロックします。
  • 新しい発作治療薬(ジタン系薬):トリプタン製剤が血管を縮めるのに対し、神経の炎症を直接抑える新しいお薬です。血管への影響が少ないため、高齢の方や高血圧の方にも使いやすくなりました。
  • 予防薬:発作の回数が月に数回以上あるような重症の方には、毎日お薬(カルシウム拮抗薬、β遮断薬、抗てんかん薬など)を飲むことで、発作の回数や痛みの程度を半分以下に減らす治療を行います。近年では、月1回の注射で高い予防効果を発揮する最新の「抗体製剤」も登場しています。
2. 日常生活での対策

自分自身の頭痛の「引き金(寝不足、特定の食品など)」を知り、それを避ける工夫をします。また、発作が起きてしまったときは、「静かな暗い部屋で横になり、痛む部分を冷やす(温めるのは血管を広げるため逆効果)」と痛みが和らぎます。

高尿酸血症・痛風

病気について

高尿酸血症とは、血液中の「尿酸」という物質の濃度が基準値を超えて高くなっている状態のことです。そして、その尿酸が関節の中で結晶化して激しい炎症を起こし、ある日突然、猛烈な痛みを引き起こす病気を「痛風(つうふう)」と呼びます。圧倒的に成人男性に多い病気です。

原因は、遺伝的な体質のほか、肉や魚の食べすぎ(プリン体の過剰摂取)、アルコール(特にビール)の飲みすぎ、肥満、激しい運動、水分不足などです。

  • 主な症状:ある日突然襲う激痛
    典型的なのは、「足の親指の付け根が赤く腫れ上がり、風が吹くだけでも激痛が走る(痛風発作)」という症状です。発作は通常、1週間〜10日ほどで一旦自然に治まりますが、根本的な原因(高尿酸血症)を治さない限り、何度も繰り返します。
  • 放置した場合のリスク:痛風発作だけでなく、尿酸の結晶が体中のあちこちに溜まっていきます。皮下にコブができる「痛風結節(けっせつ)」、尿の通り道に石ができる「尿路結石」、そして腎臓の機能がボロボロになる「痛風腎(腎不全)」を引き起こします。また、動脈硬化を進め、心筋梗塞のリスクを高めることも分かっています。

主な診断方法

採血による数値の確認と、症状が出ている場所の観察で診断します。

  • 血液検査(尿酸値の測定):血液中の尿酸値が 7.0 mg/dL を超えている場合、高尿酸血症と診断されます。
  • 注意:発作中は尿酸値が下がることがあります
    痛風発作が起きているまさにその瞬間は、尿酸が関節に移動して結晶化しているため、血液中の尿酸値が一時的に「正常」まで下がってしまうことがあります。そのため、数値だけでなく、関節の腫れ方や経過を総合的に診て診断します。
  • 関節超音波(エコー)検査 / 関節液検査:腫れている関節をエコーで見ると、尿酸の結晶が白く積もっている様子(ダブルコントゥアサイン)を確認できます。

主な治療

「痛風発作を鎮める治療」と、その後に始める「尿酸値を下げる根本治療」の2段階で行います。

1. 痛風発作の治療(まずは痛みを抑える)

激しい発作が起きているときは、まず痛みと炎症を抑える治療を最優先します。

  • 消炎鎮痛薬(NSAIDs):短期間、強めの痛み止めを服用して炎症を抑えます。
  • コルヒチン:発作が起きそうな「おや?ムズムズするな」という予兆の段階で飲むと、発作を未然に防ぐことができる特別なお薬です。
  • ※注意:発作が起きている最中に、尿酸値を下げる薬を急に飲み始めてはいけません。尿酸値が急激に変動すると、かえって発作が激化したり長引いたりします。
2. 尿酸値を下げる治療(発作が落ち着いてから)

発作が完全に治まってから、尿酸値をコントロールするお薬(尿酸生成抑制薬、または尿酸排泄促進薬)を少量から開始し、数ヶ月かけてじっくり「6.0 mg/dL以下」を目標に下げていきます。

3. 生活習慣の改善
  • 十分な水分補給:1日2リットル以上の水分(お水や麦茶)を摂り、尿から尿酸をどんどん排泄させます。
  • お酒・プリン体を控える:ビールだけでなくアルコール自体が尿酸値を上げます。レバーや白子、干物などプリン体の多い食事を控え、肥満を解消しましょう。

骨粗鬆症

病気について

骨粗鬆症とは、骨の量(骨密度)が減り、骨の質が劣化することによって、骨がスカスカでもろくなり、わずかな衝撃でも骨折しやすくなる病気です。

骨は常に「古い骨を壊し(骨吸収)、新しい骨を作る(骨形成)」というリサイクルを繰り返しています。しかし、加齢や、特に女性の場合は閉経による女性ホルモン(エストロゲン)の減少によってこのバランスが崩れると、骨を壊すスピードが勝ってしまい、骨がもろくなります。そのため、閉経後の女性に非常に多く見られるのが特徴です。

  • 「気づかないうちに進む」背中と腰の変形
    骨自体がもろくなっても、痛みは全くありません。しかし、自分の体重を支えきれなくなった背骨(椎体)が、気づかないうちにじわじわと潰れていく「いつの間にか骨折(圧迫骨折)」を起こします。「最近、背中が丸くなってきた」「身長が2cm以上縮んだ」「背中や腰が重だるく痛む」といった変化は、骨粗鬆症の重要なサインです。
  • 放置した場合のリスク:寝たきりの原因に
    骨がもろくなった状態を放置すると、転んだ拍子に「大腿骨近位部(太ももの付け根の骨)」を骨折しやすくなります。この場所を骨折すると、多くの場合で手術や長期の入院が必要となり、そのまま「寝たきり(要介護状態)」になってしまうリスクが非常に高いため、高齢期の生活の質を守るために予防と治療が極めて重要です。

主な診断方法

骨の強さを測る特別な検査と、骨折の有無を調べる検査を行います。

  • 骨密度測定(DEXA法など):骨の強さを数値化する検査です。当院(または連携施設)では、最も正確とされる「DEXA(デキサ)法」を用いて、骨折しやすい「腰の骨(腰椎)」と「太ももの付け根(大腿骨)」に微弱なX線を当てて測定します。若年成人の平均値(YAM値)と比べて70%以下の場合、骨粗鬆症と診断されます。
  • 胸腰部X線(レントゲン)検査:背骨が潰れていないか(圧迫骨折がないか)を確認します。すでにここを骨折している場合は、骨密度の数値がそこまで低くなくても骨粗鬆症と診断されます。
  • 血液・尿検査(骨代謝マーカー):骨のリサイクルのバランス(骨を壊す勢いと作る勢いの強さ)を調べ、どのお薬がその患者さんに最も適しているかを選ぶ基準にします。

主な治療

骨粗鬆症の治療は、お薬によって骨密度を高め、「将来の骨折を絶対に防ぐこと」がゴールです。

1. 薬物治療(選択肢が非常に豊富です)

患者さんの年齢、骨密度の低さ、骨代謝のタイプに合わせてオーダーメイドでお薬を選びます。

  • ビスホスホネート製剤 / 抗RANKL抗体:骨が壊されるのを強力に抑えるお薬です(毎日飲むもの、週1回、月1回、半年に1回の注射など様々なタイプがあります)。
  • SERM(サーム):骨に対して女性ホルモンと似た良い働きをして、骨を強くするお薬です(比較的若い閉経直後の方によく使われます)。
  • 活性型ビタミンD3製剤:食事からのカルシウムの吸収を助け、骨の質を良くするお薬です。
  • 骨形成促進薬(テリパラチドなど):骨を「作る」働きを強力に高めるお薬で、すでに骨折を起こしているような重症の方に使用します。
2. 食事療法と運動療法
  • 食事:骨の材料となるカルシウム(乳製品、小魚、豆腐)、カルシウムの吸収を助けるビタミンD(鮭やキノコ類)、骨の質を保つビタミンK(納豆、緑黄色野菜)を積極的に摂ります。
  • 運動:骨は「物理的な刺激(負荷)」がかかることで強くなります。ウォーキングや、かかとに軽い衝撃を与える「かかと落とし運動」、片足立ち(バランス訓練)を毎日続けることで、骨が丈夫になり、転倒の予防にもつながります。

貧血 (鉄欠乏性)

病気について

貧血とは、血液中で酸素を全身に運ぶ役割をしている「赤血球」や、その中にある「ヘモグロビン」という成分が減ってしまった状態のことです。

貧血にはいくつかの種類がありますが、最も頻度が高いのは、体内の鉄分が不足することでヘモグロビンが作れなくなる「鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)」です。月経による出血がある女性や、成長期のシニア、食事の偏りがある方に多く見られます。

  • 主な症状:全身の「酸欠状態」
    ヘモグロビンが減ると、全身の細胞に十分な酸素が行き渡らなくなります。そのため、「少し動いただけですぐ息が切れる」「体がだるい、疲れやすい」「立ちくらみやめまいがする」「顔色が悪い(白っぽい)」といった症状が現れます。また、爪がもろくなってスプーンのように反り返ったり(スプーン爪)、氷を無性に食べたくなる(氷食症)といった特徴的な症状が出ることもあります。
  • 放置した場合のリスク:酸素不足を補おうとして、心臓は一生懸命に血液をたくさん送り出そうとフル回転します。この状態が長く続くと、心臓に過度な負担がかかり続け、将来的に心不全を引き起こす原因になります。また、高齢者の場合は認知機能の低下やふらつきによる転倒リスクを高めます。

主な診断方法

簡単な採血(血液検査)によって、貧血の有無だけでなく「体にどれくらい鉄が蓄えられているか」まで正確に調べます。

  • 血液検査(一般項目)
    • Hb(ヘモグロビン値):成人女性で 12.0 g/dL 未満、成人男性で 13.0 g/dL 未満の場合に貧血と診断されます。
    • MCV(赤血球の大きさ):鉄欠乏性貧血では、赤血球のサイズが通常より小さくなります(小球性貧血)。
  • 鉄代謝検査(貯蔵鉄のチェック)
    • フェリチン:体の中の「貯蔵鉄(鉄の銀行預金)」を表す数値です。ヘモグロビンの値が正常であっても、このフェリチンが極端に低い場合は「隠れ貧血(鉄欠乏症)」であり、将来的に貧血になる手前の段階として治療や食事改善の対象となります。

主な治療

不足している鉄分をお薬で補うとともに、「なぜ鉄が足りなくなったのか(原因の究明)」を同時に行います。

1. 薬物治療(鉄剤の服用)

不足した鉄を補うために、「鉄剤(内服薬)」を処方します。

  • 重要な注意点:鉄剤を飲み始めると、通常1〜2ヶ月ほどで血液中のヘモグロビン値は正常に戻り、体のラクさを実感できるようになります。しかし、そこでお薬をやめてはいけません。ヘモグロビンが満たされた後、空っぽになっている「貯蔵鉄(フェリチン)」が十分に溜まるまで、さらに数ヶ月(合計3〜6ヶ月程度)お薬を飲み続ける必要があります。
  • ※副作用について:鉄剤を飲むと、一時的に「便が真っ黒に変化」しますが、これは吸収されなかった鉄の色なので心配ありません。また、人によっては軽い吐き気や胃のムカつき、便秘が起きることがあります。その場合は、お薬の種類を変更したり、シロップ剤にしたり、胃薬を併用したりして優しく対応しますのでご安心ください。
2. 「鉄が失われている原因」の治療(極めて重要です)

特に大人の男性や、閉経後の女性に鉄欠乏性貧血が見つかった場合、食事不足だけではなく、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、あるいは「胃がん」「大腸がん」などの消化管から、気づかないうちにジワジワと出血が続いている可能性があります。そのため、必要に応じて胃カメラや大腸カメラの検査をおすすめすることがあります。

3. 食事の工夫

レバー、赤身のお肉や魚、アサリなどに含まれる「ヘム鉄」は体に吸収されやすいため、日々の食事で意識して摂るようにしましょう。また、ビタミンCを一緒に摂ると鉄分の吸収率がアップします。